デジタル遺品とは?遺族が直面する意外な困難
スマートフォンやパソコン、SNSアカウントなど、私たちの生活はデジタル機器やオンラインサービスで溢れています。
これらは「デジタル遺品」として、大切な人が亡くなった後に遺族の元に残されます。
多くの方が気づいていないのですが、このデジタル遺品の処理は想像以上に複雑で、遺族にとって大きな負担となることがあるんです。
あなたやご家族が将来困らないために、デジタル遺品の管理と対策について詳しく解説していきます。
デジタル遺品が引き起こす遺族の悩みとは
デジタル遺品の問題は、実は私自身も親戚を亡くした際に直面しました。
スマホのロック解除ができず、大切な写真データにアクセスできなかったんですよね。
こういった経験は珍しくありません。

デジタル遺品のトラブルで最も多いのがスマホのロックが解除出来ずにアクセスできないという問題です。
パスワードがわからず、アクセスできない
最も多い悩みがこれです。
スマートフォンやパソコンのロック解除パスワード、各種オンラインサービスのログイン情報がわからないと、中のデータにアクセスすることができません。
故人の大切な写真や動画、連絡先などが永遠に失われてしまうこともあるんです。
「母が亡くなった後、スマホに保存されていた孫との写真を見たかったのに、パスワードがわからず諦めました」という声も少なくありません。
契約の解約や引き継ぎができない
サブスクリプションサービスやクラウドストレージなど、月額課金されているサービスは、解約手続きをしないと料金が発生し続けます。
しかし、アカウント情報がわからないと解約もできず、気づいたときには数万円の請求が発生していることも。
また、故人のクレジットカードで決済されている場合、カード会社への連絡も必要になります。
SNSアカウントが放置される
FacebookやTwitter(X)、Instagramなどのアカウントが放置されると、誕生日通知が届いたり、友人からメッセージが送られてきたりと、遺族にとって心理的な負担になることがあります。
かといって、勝手に削除するのも故人の意思に反する可能性があり、悩ましい問題です。
「父のFacebookに毎年誕生日メッセージが届くたび、複雑な気持ちになります」という遺族の声もあります。
デジタル遺品の種類と具体例
デジタル遺品は多岐にわたります。具体的にどんなものがあるのか見ていきましょう。
ハードウェア系デジタル遺品
• スマートフォン
• パソコン(デスクトップ、ノートPC)
• タブレット
• デジタルカメラ
• 外付けハードディスク
• USBメモリ
• SDカードなどの記憶媒体
これらの中には、家族写真や思い出の動画など、金銭的価値はなくても感情的に非常に価値の高いデータが保存されていることがあります。
オンラインサービス系デジタル遺品
• メールアカウント(Gmail、Yahoo!メールなど)
• SNSアカウント(Facebook、Twitter/X、Instagram、LINEなど)
• クラウドストレージ(Google Drive、Dropbox、iCloudなど)
• 動画配信サービス(Netflix、Amazon Prime、Huluなど)
• 音楽配信サービス(Spotify、Apple Musicなど)
• オンラインゲームアカウント
• 仮想通貨やNFT
特に仮想通貨などは、アクセス方法がわからないと資産として引き継ぐことができなくなってしまいます。
デジタル遺品で遺族が困らないための7つの対策
デジタル遺品の問題は、事前の準備で大幅に軽減できます。
自分自身のためにも、大切な家族のためにも、以下の対策を検討してみてください。
1. デジタル遺品リストの作成
まずは自分が利用しているデジタル機器やオンラインサービスの一覧を作成しましょう。以下の情報を含めるとよいでしょう。
• サービス名
• アカウント名(メールアドレスなど)
• 利用目的
• 支払い方法(クレジットカード情報など)
• サービス内に保存している重要なデータの種類
ただし、このリストにパスワード自体は記載しないことをおすすめします。パスワードは別の方法で管理しましょう。
2. パスワード管理の工夫
パスワードの管理方法はいくつかあります。
• パスワード管理ソフト(LastPass、1Passwordなど)のマスターパスワードを信頼できる家族に伝える
• 紙の封筒にパスワードリストを入れ、弁護士や信頼できる家族に預ける
• 銀行の貸金庫にパスワードリストを保管する
私の場合は、親しい友人と「もしものとき」のための情報を交換しています。
お互いに信頼関係があれば、こういった方法も有効です。
3. デジタル遺言の作成
デジタル遺言とは、デジタル資産の取り扱いについての希望を記した文書です。
法的な遺言とは別に作成することができます。
• どのアカウントを削除してほしいか
• どのデータを家族に残したいか
• SNSアカウントをメモリアルアカウントにするかどうか
• デジタル写真や動画の取り扱い方法
などを具体的に記載しておくと、遺族の判断の助けになります。
4. アカウントの死後設定を活用する
主要なオンラインサービスでは、利用者が一定期間ログインしなかった場合の対応を事前に設定できる機能があります。
例えば、Googleの「アカウント無効化管理ツール」では、一定期間アクティビティがない場合に、特定の連絡先にデータへのアクセス権を付与したり、アカウントを削除したりする設定ができます。
Facebookにも「追悼アカウント」の設定があります。
これらの機能を活用することで、遺族の負担を減らすことができます。
5. 重要なデータのバックアップ
思い出の写真や重要な書類などは、複数の場所にバックアップしておくことをおすすめします。
• 外付けハードディスク
• USBメモリ
• クラウドストレージ
• 写真は実際にプリントしておく
特に家族写真などは、デジタルだけでなく実際に印刷しておくと、パスワードの問題に関わらず遺族が見ることができます。

私の家でも大切な写真はデジタル保存だけではなく、プリントアウトしています。
6. 家族との情報共有
デジタル遺品について、家族と話し合う機会を持ちましょう。
デリケートな話題かもしれませんが、「もしものとき」のための準備として伝えておくことが大切です。
• デジタル遺品リストの保管場所
• 重要なパスワードの取得方法
• デジタル資産に関する希望
こういった情報を共有しておくことで、万が一の際に遺族の負担を軽減できます。
7. 専門家への相談
デジタル遺品の管理が複雑だと感じる場合は、専門家に相談することも検討しましょう。
最近では、デジタル遺品の整理を専門とする遺品整理業者も増えています。
遺品整理業者は、デジタル機器の取り扱いやデータの抽出、オンラインアカウントの解約手続きなどをサポートしてくれます。
特に高齢の遺族がいる場合は、専門家のサポートがあると安心です。
遺族がデジタル遺品に直面したときの対応方法
すでにデジタル遺品の問題に直面している遺族の方向けに、対応方法をご紹介します。
まずは全体像を把握する
故人が利用していたデジタル機器やサービスの全体像を把握することから始めましょう。
• スマートフォン、パソコン、タブレットなどの機器を確認
• 請求書や領収書から定期的な支払いがあるサービスを特定
• メールの受信トレイからアカウント情報を探す
全体像がわかれば、優先順位をつけて対応することができます。
重要なデータの保存
パスワードがわからなくても、専門業者に依頼することでデータを取り出せる可能性があります。
特に思い出の写真や動画は、家族にとって貴重な財産です。
ロックがかかっていないパソコンなどがあれば、まずは重要なデータをバックアップしておきましょう。
各サービスの相続・削除手続き
各オンラインサービスには、利用者が亡くなった場合の手続き方法が定められています。
例えば、Appleの場合は「デジタル遺産プログラム」があり、死亡証明書などの書類を提出することでアカウントデータにアクセスできることがあります。
Googleも同様に、死亡証明書と遺族であることを証明する書類を提出することで、データの取得や削除が可能です。
各サービスのヘルプページで「死亡」「相続」などのキーワードで検索すると、必要な手続きが見つかることが多いです。
専門業者への依頼
デジタル遺品の整理に困ったら、専門の遺品整理業者に相談することをおすすめします。
デジタル機器からのデータ抽出や、オンラインアカウントの解約手続きなど、専門的なサポートを受けることができます。
遺品整理業者を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
• デジタル遺品の取り扱い実績があるか
• 料金体系が明確か
• 個人情報の取り扱いポリシーが適切か
• 相談しやすい雰囲気があるか
複数の業者に相談して比較することをおすすめします。
デジタル遺品に関する法的な問題と注意点
デジタル遺品の取り扱いには、法的な側面も存在します。
知っておくべき重要なポイントをご紹介します。
デジタルコンテンツの所有権
多くの人が勘違いしていますが、iTunes、Kindle、Steamなどで購入したデジタルコンテンツは、実は「所有」しているわけではなく、「利用権」を購入しているだけのことが多いです。
そのため、法的には相続できないケースがあります。
各サービスの利用規約を確認し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
プライバシーの問題
故人のデジタル機器やアカウントには、プライバシーに関わる情報が含まれていることがあります。
遺族であっても、故人のプライバシーを尊重することが大切です。
特に故人が生前に「見られたくない」と思っていたであろう情報に関しては、慎重に取り扱うべきでしょう。
契約の終了手続き
サブスクリプションサービスなどの契約は、利用者の死亡によって自動的に終了するわけではありません。
解約手続きを行わないと料金が発生し続けることがあります。
クレジットカード会社への連絡も忘れずに行いましょう。故人名義のカードで決済されているサービスがないか確認することが重要です。
デジタル遺品整理の専門業者の選び方
デジタル遺品の整理を専門業者に依頼する際は、以下のポイントを確認しましょう。
業者選びの重要ポイント
• デジタル遺品の取り扱い実績と専門知識
• 料金体系の透明性(見積もりは無料か、追加料金の有無など)
• 個人情報保護の取り組み(データの取り扱い方針など)
• アフターサポートの充実度
• 口コミや評判
特にデータの取り扱いについては、機密保持契約を結ぶなど、しっかりとした対応をしている業者を選ぶことが大切です。
相談から依頼までの流れ
一般的な流れは以下の通りです。
1. 電話やメールで初回相談(多くの場合無料)
2. 現地調査または詳細なヒアリング
3. 見積もり提示と契約内容の確認
4. 作業実施(データ抽出、アカウント整理など)
5. 作業報告と引き渡し
初回相談の段階で、業者の対応や専門知識をチェックすることをおすすめします。
デジタル遺品問題から考える、これからのデジタルライフ
デジタル遺品の問題は、私たちのデジタルライフのあり方を見直すきっかけにもなります。
デジタルミニマリズムの実践
必要のないデジタルサービスやアプリは定期的に整理し、アカウント数を必要最小限に抑えることで、将来的な遺族の負担を減らすことができます。
使っていないサブスクリプションサービスはないか、定期的に見直してみましょう。
これは生前の出費を抑える効果もあります。

普段から無駄な出費がないか確認してみましょう。使ってないサブスクが複数ある方も多いのではないでしょうか?
デジタルとアナログのバランス
大切な写真や文書は、デジタルだけでなくアナログ(印刷物)としても残しておくことをおすすめします。
例えば、年に一度、その年の思い出の写真をフォトブックにまとめるなどの習慣があると、デジタルデータにアクセスできなくなっても、思い出を形として残すことができます。
定期的な見直しの習慣化
デジタル遺品リストやパスワード管理は、定期的に見直すことが大切です。
例えば、誕生日や年末など、決まったタイミングで更新する習慣をつけるとよいでしょう。
特にパスワードを変更した場合は、管理情報も更新することを忘れないようにしましょう。
まとめ:デジタル遺品対策は「今」始めるべき理由
デジタル遺品の問題は、決して他人事ではありません。
スマートフォンやパソコンを使い、オンラインサービスを利用している全ての人に関わる問題です。
「まだ若いから」「元気だから」と先送りにせず、今からできる準備を始めることが、将来の遺族の負担を減らすことにつながります。
具体的なアクションプランとしては、以下の3つから始めてみてはいかがでしょうか。
1. デジタル遺品リストの作成(利用しているサービスの一覧)
2. 重要なデータのバックアップ(特に思い出の写真や動画)
3. 家族との情報共有(デジタル資産に関する希望や情報の保管場所)
これらの準備は、決して難しいものではありません。
少しの時間と労力で、将来の大きな負担を軽減することができるのです。
大切な人が残されたデジタル遺品に困ることのないよう、そして自分自身のデジタル資産が適切に引き継がれるよう、今日から対策を始めてみませんか?
デジタル遺品の整理でお困りの方は、専門の遺品整理業者への相談も検討してみてください。
経験豊富なスタッフが、あなたの状況に合わせた最適な解決策を提案してくれるはずです。

デジタル遺品の準備は早ければ早いほど後が楽になります。まずはエンディングノートを活用することから始めるのもいいですね!